小児のう蝕[しょうにのうしょく]について
小児のう蝕の原因について
小児のう蝕は、主に母親などの保護者から伝伝播したう蝕の原因菌=ミュータンスレンサ球菌によって引き起こされる感染症です。 また、う蝕の発生には食生活が大きく影響します。
う蝕の発生メカニズム
う蝕は下記の順によって発生することとなります。
1. プラーク(歯垢)が形成される
ミュータンスレンサ菌は、「グルコシルトランスフェラーゼ」という酵素によってスクロース(砂糖)から、粘着性で水に溶けないグルカン(多数のグルコースが結合した重合体)を産生し、バイオフィルムをつくって歯面に強く付着します。
バイオフィルムとは
微生物と、微生物が産生した物質が集合したもののことです。プラークは微生物(ミュータンスレンサ球菌)と微生物の産生した物質(グルカン)が集合したバイオフィルムです。
口腔内にバイオフィルム(プラーク)が形成される際に、ほかの口腔細菌を巻き込み、菌塊が形成されます。
2. 有機酸が産生される
プラーク内の細菌は、食物中の炭水化物を代謝して有機酸を発生させます。 有機酸がプラーク内に蓄積されるとエナメル質が脱灰(だっかい、硬組織(歯のエナメル質や象牙質)から塩の結晶(リン酸カルシウム)が溶出する現象)され、う蝕が発生します。
3. プラークのはたらきにより脱灰が促進される
プラークの中にいる細菌は、唾液に含まれる抗菌物質の作用を受けにくく、プラークの中で長く生存し続けることが可能となります。 また、産生された有機酸は拡散しにくいうえに希釈や緩衝作用をうけませんので、歯のエナメル質の脱灰は促進されていきます。
ミュータンスレンサ球菌の感染
まだ歯が萌出してない幼児の口腔内からミュータンスレンサ球菌が検出されることはありません。 乳歯の萌出後、1歳前後からミュータンスレンサ球菌が口腔内に定着し始め、乳歯の萌出本数が増えるにしたがってミュータンスレンサ球菌の検出率はあがっていきます。 3歳になると、約60%の小児にミュータンスレンサ球菌の定着がみられると言われています。
ミュータンスレンサ球菌が検出されてから、6か月から1年ほど遅れてう蝕の罹患率があがります。 ミュータンスレンサ球菌への感染時期が遅くなると、萌出後成熟により歯の石灰化が促進され、う蝕の発生は減少します。
ミュータンスレンサ球菌の感染経路
多くの場合、感染源は母親などの保護者です。 母親から子供に感染するとした場合の因子としては、
- 母親の唾液中のミュータンスレンサ球菌の菌量
- 母親の唾液が子供のくちに入る頻度
- 子供の口にミュータンスレンサ球菌が入ったときにスクロースがあるかどうか
があげられます。
たとえば、母親がう蝕に罹患していて唾液中に多くのミュータンスレンサ球菌を有しているときに、母親の食器でスクロースを含む食べ物を子供に食べさせたりすると、子供は早期かつ重度にミュータンスレンサ球菌に感染するリスクがあります。
カイス(Keyes)の3つの輪
食べ物(砂糖など)、細菌(バクテリア、プラーク)、宿主(歯の形、唾液など)の3つの要因がそろうことでう蝕ができるという理論です。
「小児のう蝕」についての関連キーワード
★ SNSで最新お役立ち情報を受け取ろう
Twitterアカウントをフォロー Follow @firstnavi_dh
Facebookアカウントをフォロー
★ ファーストナビは歯科衛生士のお仕事紹介実績No.1!