2015年12月11日

乳歯のう蝕[にゅうしのうしょく]について

乳歯のう蝕について

乳歯のう蝕の大きな特徴として、う蝕が簡単に発生してしまうことがあげられます。
当然のことながら、小児は大人と同じように、上手に歯を磨くことができません。
口腔清掃が不十分になりがちであることに加え、スクロースの摂取機会は多いため、う蝕になりやすいと言えます。

また、乳歯のエナメル質、象牙質は永久歯のエナメル質、象牙質の約半分の薄さしかなく、石灰化度も低いためにう蝕に対する対抗性が低く、う蝕になってしまったのちの進行も早くなります。
同時に多数歯、多数面にう蝕が発生しやすく、大人ではあまり見られない平滑面でのう蝕発生も見られることがあります。
歯髄炎や歯根膜炎に進展することもありますので、清掃管理を強化することで、個別の歯のみならず全体のう蝕進行の抑制を促す必要があります。

なお、乳歯の第二象牙質(歯が神経を守ろうとして新たにつくられる象牙質)の形成は旺盛ですので、適切な処理を行えば、歯を残すことがきる場合も多いです。
また、小児はう蝕について自覚が少ないことが多いため、そのことを踏まえて観察する必要があります。

乳歯のう蝕罹患率

乳歯のう蝕有病率者率(罹患率)は年々減少の一途をたどっています。
特に平成以降は急激に減少しており、昭和62年までは90%以上であった6歳のう蝕有病率は平成17年には70%を割り込み、さらに平成23年には50%を割っています。

乳歯のう蝕罹患率推移

乳歯う蝕の好発部位

乳歯列期のう蝕は、年齢に対応した好発部位があることが知られています。

年齢 好発部位
2歳ごろまで 上顎乳切歯唇側面
3歳ごろまで 上顎乳切歯隣接面
3歳6か月ごろまで 上下顎乳臼歯咬合面
3歳6か月以降 上下顎乳臼歯隣接面

必ずしもう蝕がこの順番に発生するわけではありませんが、どの時期に、どこにう蝕が発生しやすいのかを理解しておくことは、口腔衛生指導をするうえでとても重要になります。

う蝕の罹患状況

3歳児のう蝕罹患状況について、厚生労働省は口腔を上下顎×前歯部、臼歯部に分類し、それぞれのう蝕罹患状況について分類しています。

  • O型:う蝕なし
  • A型:上顎前歯部のみ、あるいは上顎臼歯部のみにう蝕
  • B型:臼歯部および上顎前歯部にう蝕 ※う蝕感受性が高いため、慎重に対応する必要があります。
  • C型:下顎前歯部にう蝕
  • C1:下顎前歯部のみにう蝕
  • C2:下顎前歯部および他の部位にう蝕 ※重症う蝕症であり、歯科領域だけではなく全身状態についても考慮する必要があります。

う蝕罹患状況の分類

哺乳う蝕

哺乳う蝕とは

3歳未満の乳幼児について、上顎前歯の口蓋側に発生するう蝕です。
非常に特徴的であり、平滑面のエナメル質が広範囲に脱灰し、上顎前歯部の平滑面や第一乳臼歯の咬合面に重篤なエナメル質の欠損をもたらしていしまいます。
なお、哺乳う蝕は下顎前部には認められません。

哺乳う蝕の原因

哺乳う蝕が発生するメカニズムははっきりとわかっていませんが、2歳を過ぎても寝かしつける際に母乳を飲みながら寝かせるという不適切な授乳行為や、糖質を含んだ甘味飲料等を飲みながら寝るという習慣が原因だと考えられます。
乳幼児は寝てしまうと唾液の分泌がほとんどなくなり、口腔内の甘味飲料等は飲み込まれずに前歯を覆ってしまいます。
口腔内の細菌が糖質を退社して酸を産生することで、飲料に接していたエナメル質が脱灰され、重度のう蝕を引き起こします。
哺乳う蝕を防ぐためには、糖質を含んだ飲料を飲みながら寝るという習慣をやめさせる必要があります。

哺乳びんう蝕

哺乳びんを用いてミルクや甘味飲料などを飲ませることで起こる哺乳う蝕のことを、哺乳びんう蝕ともいうこともあります。

乳歯のう蝕が引き起こす問題点

痛みを感じる

痛みによって不快感を感じたり、集中力の欠如を引き起こしたりします。
さらに咬合痛(かんだ時の痛み)があると、食べ物の好き嫌いの原因になることもあります。

永久歯のう蝕の原因になる

う窩(う蝕によってできた穴)はう蝕原性細菌の供給源となります。
そのまま放置すると他の乳歯のみならず、新たに萌出してくる永久歯にもう蝕を発生させてしまいます。

咀嚼機能が低下したり、摂食意欲の減退したりする

う蝕によって歯の欠損が起こると咀嚼機能が低下してしまいます。
また、う蝕の痛みによって摂食意欲が減退し、栄養状態にもよくない影響が出ます。

歯列不正や咬合異常の原因になる

う蝕によって歯冠崩壊が起こると、咬合高径の低下や、正中の偏位(傾いたり偏ったりすること)などの咬合異常を引き起こすことがあります。
また、乳臼歯がう蝕により早期に喪失すると、第一大臼歯の近心移動を誘発し、歯列不正の原因となります。

永久歯の障がいになる

乳歯のう蝕が進行して根尖に歯周炎の病巣を作ると、根尖の近くにある永久歯胚のエナメル質形成障がい(ターナー歯)を引き起こすことがあります。

発音障がいや口腔習癖の誘発する

う蝕によって切歯の崩壊や欠損がおこると、発音障がいを招くことがあります。
また、抜歯による欠損が口唇や舌の口腔習癖の原因になることもあります。

全身疾患の原因になる

先天性心疾患などの循環器系の疾患がある小児に対し、う蝕が感染性心内膜炎のリスク要因になることなどがあります。

心理的にマイナスの影響を与える

前歯の欠損などによって審美障がいが起こった場合、小児の心理にマイナスの影響を与える懸念があります。

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