歯科衛生士が知っておくべき患者ごとの接し方のポイントまとめ
【患者層によって得意不得意のある歯科衛生士も】
歯科医院の患者層は歯科医院ごとに本当に様々です。
まんべんなくいろいろな年齢層、患者層がいらっしゃる歯科医院もあれば、小児の専門であったり、サラリーマンが中心だったり、高齢者が多かったり。
歯科医院の方向性が変わって患者層が変化することもありますし、転職した先の歯科医院が前職とは異なる患者層であることも当然あります。
場合によっては、近くに大型マンションがたったりして患者層が変わるケースもあるかもしれません。
当然のことながら、歯科医院の患者層が変化すれば、そこで働く歯科衛生士が対応する患者層にも変化があります。
今までまったくお子様の患者を対応していなかったのに急に対応しなければいけなくなったり、はじめて妊婦の患者の対応をしなければいけなくなったりしたら、やはり歯科衛生士さんも戸惑ってしまいますよね。
「ファーストナビ」では、患者層ごとに、歯科衛生士さんが患者さんに接する際に気を付けるべきポイントについてまとめました。
「歯科衛生士が知っておくべき患者ごとの接し方のポイントまとめ」の目次
歯科医院の患者層は変化する?
小児の患者への接し方について
高齢者の患者への接し方について
障がい者の患者への接し方について
妊婦の患者への接し方について
認知症の患者への接し方について
患者の年代別特徴とその対応
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歯科医院の患者層の変化について
【さまざまな要因で患者層は変化する】
歯科医院における患者層の変化にはいくつかのパターンがあると言われています。
代表的なものとしては、歯科医院にとっての勤務先歯科医院に以下のことが起こったときがあげられます。
- 勤務先歯科医院の周辺環境の変化
- 勤務先歯科医院の方向性の変化
- 勤務先歯科医院そのものが変化
小児の患者への接し方について
【歯科衛生士が小児患者に接する際のポイント】
小児の患者の特徴
低年齢の患児は、歯科治療の必要性を理解することがなかなかできません。
そのため、小児の治療には保護者の協力が欠かせません。
そもそも保護者が歯科治療の必要性やおおまかな内容を理解し、歯科衛生士と保護者との信頼関係がなければ小児の歯科治療は非常に困難なものとなります。
また、小児は日々発達、発育していますので、そのことを歯科衛生士がよく理解している必要があります。
小児歯科治療はもちろん、矯正歯科治療を行っている歯科医院には小児の患者が多く来院しますので、正しく対応方法を理解することが求められます。
また、ファミリー層の多い新興住宅地にある歯科医院や、ショッピングモール内の歯科医院などにも多くの小児患者が訪れます。
歯科衛生士が注意すべき、小児の患者への接し方のポイント
小児の患者と接する場合には、以下の点に注意する必要があります。
- 小児の特性や発達、発育段階を十分理解する
- 不必要に不安感や恐怖心を与えない
- 患児の安全を確保し、事故防止には特に配慮する
- 治療時間をなるべく短くする
- 患児との良好な意思疎通がはかれるように努力する
高齢者の患者への接し方について
【歯科衛生士が高齢者の患者に接する際のポイント】
高齢者の患者の特徴
高齢者の場合には、一見健康そうに見える人でも、脳血管障がい、心臓疾患、糖尿病などの疾患を有していることが少なくありません。
さらに、高齢者は身体各部の機能や抵抗力も低下しています。
また、高齢になると、生理現象として
- 唾液分泌の減少
- 味覚の低下
- 歯の動揺、喪失(による義歯の装着)
- 食欲の低下
などが起こります。
高齢者の患者は今では特定の若年齢層向けの歯科医院などでなければ、ほとんどの歯科医院に来院しますので、訪問歯科診療を行う歯科医院や介護施設で働く歯科衛生士はもちろん、すべての歯科衛生士にとって高齢者の患者への対応は必須のスキルと言えそうです。
歯科衛生士が注意すべき、高齢者の患者への接し方のポイント
- 全身の健康状態、及び生活習慣を観察し、把握したうえで、個人の状況にあった対応をこころがける
- 患者との信頼関係を確立するために、言葉遣いや態度に注意する (名前で呼ばずに「おじいちゃん」、「おばあちゃん」と呼ばれることに抵抗がある高齢者もいます。
また、ちょっとした口調や態度で高圧的、生意気ととらえられることもあります)
障がい者の患者への接し方について
【歯科衛生士が障がい者の患者に接する際のポイント】
障がい者の患者の特徴
ひとことで障がい者、といっても身体的な障がい、精神的な障がい、知的な障がいなど、その内容はさまざまです。
言うまでもなく、身体的、精神的、知的といってそのぞれぞれもひとくくりにできるものではありません。
まずは障がいについての理解や把握が必要になってきます。
障がいのある患者さんは通常の治療を通常に受けることができないことが少なくありません。
車椅子やストレッチャーのまま診療をしないといけないケースもありますので、歯科医院内に車椅子やストレッチャーのまま診療ができる設備を用意したり、安全性が確保された環境づくりを心掛ける必要があります。
障がい者の患者、あるいはその保護者や療育者に対しては、歯科疾患についての相談、予防、治療だけではなく、全身の健康管理や日常生活、社会生活に対しての支援をしていく姿勢が重要です。
一般の歯科医院の外来において、歯科衛生士が障害のある患者さんの対応をすることはそれほど多くないと思いますが、病院、訪問歯科診療を行う歯科医院、介護福祉施設などでの勤務をする場合には対応が求められることもあります。
歯科衛生士が注意すべき、障がい者の患者への接し方のポイント
- 障がいの内容や程度を把握し、それに応じた援助を行う
- 患者の不安、苦痛や恐怖の内容と程度を把握し、それらをできるだけ取り除くようにすることで、患者が落ち着いて診療を受けられるようにする
- いつも以上に、事故防止、安全対策を心がける
- 患者の保護者や療育者との信頼関係を築き、協力を得られるようにする
- 全身疾患がある場合などには、それらの疾患を理解し、全身状態の観察と異常の早期発見に努める
妊婦の患者への接し方について
【歯科衛生士が妊婦の患者に接する際のポイント】
妊婦の患者の特徴
妊婦の患者に歯科治療や口腔衛生指導を行う場合には、エックス線撮影などによる、胎児への影響について配慮する必要があります。
妊娠の時期によって受ける影響も異なりますので、どんな時期なのかを把握し、各時期に適した対応を行う必要があります。
妊娠中は、偏食になったり間食の回数が増えたりしがちですので、口腔内細菌が増殖しやすく、齲蝕になりやすいと言えます。
とくに妊娠初期の妊娠悪阻(つわり)の頃は、口腔内を清潔に保つことが難しく、注意が必要です。
抜歯や侵襲の大きな歯科治療を行う場合については、妊娠16週目から31週目の安定期に行うことが望ましいと言われます。
歯科衛生士が注意すべき、妊婦の患者への接し方のポイント
- 妊娠のどの時期であるかを把握する
- 妊娠の各時期に適した治療計画を作成する
- 長期間の仰臥位(上を向いて寝た状態)は、胎児への影響が起こり得るので注意する
- 患者の楽な体位を工夫する
- 口腔清掃が十分できているかを観察し、必要に応じて指導する
- 食生活について聞き、栄養バランスや食事時間などが適切なものになるよう指導する
- 患者が自分自身で歯、歯肉、粘膜などの状態をチェックできるように指導する
- 妊娠の特性を理解し、会話や対応に注意する
- 妊娠中は内分泌機能が変化し、精神的に不安定な状態が生じる場合がある
認知症の患者への接し方について
【歯科衛生士が認知症の患者に接する際のポイント】
認知症の患者の特徴
認知症とは、一度発達した知的機能が脳の器質的障がいにより広汎、継続的に低下した状態を指します。
一言で認知症といっても、その障がいはさまざまで、また、認知機能障がいの原因となる認知症性疾患も多くの種類があります。
また、それぞれの予後や治療法も異なりますので、そのことを理解して認知症患者と接する必要があります。
当然のことながら、歯科衛生士は看護師や介護専門職と比べて認知症の知識を得る機会が限られていますので、注意が必要です。
歯科衛生士が注意すべき、認知症の患者への接し方のポイント
- 同じことを何度も繰り返すことがあるが、患者自身ははじめて話している認識であるので、何度聞いても初めて聞いたような反応をする
- コミュニケーションを取る際にはあいまいな表現は避け、なるべく具体的な言葉を使う
- 思い込みや偏見をなくし、患者が、何ができて何ができないのかを把握する
- 患者の精神的な安定を確保するため、優しい態度で接する
- 患者の失敗をあげつらったり、人格を否定するような言動をしない
- 認知症は病気であることをしっかり理解する
- 患者家族との良好な関係性を築き、協力を得られるようにする
<参考>認知症における障がいについて
- ・記憶障がい
- 自分の体験した出来事や過去についての記憶が抜け落ちてしまう障がい。自覚がなく、また、最近の記憶から抜け落ちやすい。
- ・見当識障がい
- 「今がいつか(時間)」、「ここがどこか(場所)」、「この人が誰か(人)」などがわからなくなる障がい。引っ越しや入院などによって環境が変わったときに強く現れやすい。
- ・言語障がい
- 言いたいことがうまく言えない」、「言い間違いをする」、「人の話していることが理解できない」などの言語の適切な理解と表現能力に対する障がい。
- ・構成障がい
- 部分、全体などの構成の関係性などが理解できなくなる障がい。物を作ったりすることが困難になる。
- ・注意障がい
- 必要なことや重要なものに意識を向けたり、意識を集中させたりすることができなくなる障がい。論理的にものごとを考えたり、計画的に行動することなどができなくなる。
- ・視覚認知障がい
- 視力には問題がないにも関わらず、見たものを正しく認知できない障がい。文字を読んだり、図形を理解したりすることに時間がかかったり、できなくなったりする。
- ・行為障がい
- 反復し、継続する攻撃的、反社会的、反抗的な行動を起こす障がい。
- ・実行機能障がい
- 物事を論理的に考えたり、順序立てて考えたり、状況を把握して行動することができなくなる障がい。
【認知症によってさまざまな障がいが引き起こされる】
<参考>認知症の原因となる疾患(認知症性疾患)
- 変性疾患
- アルツハイマー病
- レビー小体を伴う認知症
- 前頭側頭葉変性症
- 皮質基底核変性症
- 進行性核上性麻痺
- ハンチントン病
- 脊髄小脳変性症
- パーキンソン病
- 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症
- 石灰化を伴う神経原繊維変化病
- 脳血管障がい
- 脳梗塞
- 脳出血
- ビンスワンガー病
- 正常圧水頭症
- 感染性認知症
- 進行麻痺
- ヘルペス脳炎
- AIDS脳症
- 進行性多巣性白質脳症
- Whipple病
- プリオン病
- クロイツフェルト・ヤコブ病
- 内分泌疾患
- 甲状腺機能低下症
- 副甲状腺機能低下症
- 副腎皮質機能低下症
- 下垂体機能低下症
- ADH分泌過剰症
- 電解質異常
- 高ナトリウム血症
- 低ナトリウム血症
- 代謝性疾患
- ビタミンB1欠乏症
- ビタミンB2欠乏症
- 葉酸欠乏症
- 肝性脳症
- 低酸素脳症
- 腎性脳症
- 中毒性疾患
- アルコール中毒
- 金属中毒
- 有機化合物中毒
- 一酸化炭素中毒
- 先天性代謝異常
- ウイルソン病
- ミトコンドリア脳症
- 白質ジストロフィー
- 脳瘍性
- 脳腫瘍
- 辺縁系脳炎
- 血管内リンパ腫
- 膠原病、炎症性疾患
- 全身性紅斑性狼蒼
- シェーグレン症候群
- 神経ベーチェット
- 血管炎
- 脱髄性疾患
- 多発性硬化症
- 薬剤性
- 外傷性
- 脳挫傷
- 慢性硬膜下血腫
- ボクサー認知症
- 廃用症候群
患者の年代別特徴とその対応
【歯科衛生士が年代別の患者に接する際のポイント】
- 乳幼児期
- 物事の理解ができないため、親による援助が必要となる。
- 理解できる年齢になっていれば、一方的な治療をするのではなく、納得いくまで説明して協力を得るようにする
- 学童期
- 十分な説明とコミュニケーションをもち、治療の協力を得るようにする
- 必要に応じて、親を交えて指導を行う
- 青年期
- 生活習慣は確立しているが、精神的に不安定になりやすい
- 訴えをよく聞き、個人として尊重する姿勢を見せる
- 成人期
- 年齢層の幅が広く、仕事や家庭といった日常生活のなかで社会影響を受けやすい
- 歯周病の進行や歯の喪失が増加しやすい
- 歯周病予防が大事な時期だと言える
- 老年期
- 身体の老化とともに機能の衰えや合併症をもつ患者が多くなる
- 理解力も低下してくるので、根気強く十分時間をとって対応するなどの配慮が必要となる
- 観察や危険防止の対策などが大切になる
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