歯科衛生士なら知っていて当然?「口腔ケア」を説明できますか?

歯科衛生士イラスト 口腔ケアに説明できる??

【口腔ケアは歯科業界では重要なキーワード】

これからは「口腔ケア」が重要になってくる。なんてニュースを目にする機会が増えてきました。
歯科衛生士の業務の重要性が高まったり、役割が広がったり。歯科衛生士の未来にとって良い話のように感じられますね。

これから歯科衛生士の口腔ケア業務が増えていき、それに伴って、歯科衛生士と口腔ケアは、今後の重要なキーワードになっていきそうです。

しかし、「口腔ケアっていったい何?」と聞かれたときに、ちゃんと説明できそうでしょうか?
自信がないという歯科衛生士さんも案外多いのでは??
そんなときに困ったことにならないように、「口腔ケア」について勉強しておきましょう。

「歯科衛生士なら知っていて当然?「口腔ケア」を説明できますか?」の目次

そもそも口腔ケアって何?
なぜ口腔ケアが重要なのか
口腔ケア実施の際の注意点
「歯科衛生士なら知っていて当然?「口腔ケア」を説明できますか?」の関連コンテンツ

口腔ケアとは何か

口腔ケアには「狭義の口腔ケア(意味を狭くとらえる場合の口腔ケア)」と「広義の口腔ケア(意味を広くとらえる場合の口腔ケア)」とがあります。

狭義の口腔ケア

狭義の口腔ケアとは、いわゆる口腔衛生管理(歯ブラシでの歯磨き、うがいなど)を指します。  

広義の口腔ケア

広義の口腔ケアは、歯ブラシでの歯磨きだけではなく、下記も指します。

  • 口腔の機能を維持、改善
    • 摂食、嚥下機能の維持、改善
    • 発音、分泌機能の維持、改善
  • 口腔疾患の改善と予防
  • 全身の健康状態の維持、増進

狭義の口腔ケアと広義の口腔ケア

広義狭義の口腔ケア

【口腔ケアには広義と狭義の2つの意味がある】

歯科衛生士だけではなく、チーム医療として効率的・効果的に口腔ケアを実施することにより、患者のQOL(生活の質。「患者が充実感・満足感を持って社会生活を送ることができているか」を計る基準。)の向上につながっていきます。

また、終末期において胃ろうや経管栄養の場合であっても、口腔ケアは誤嚥性肺炎防止になるだけではなく、口腔機能の回復によって意識レベルの向上にもつながると言われており、今後ますます広義の口腔ケアの充実は重要になってくると考えられます。

このページでは、「広義の口腔ケア」を指す言葉として「口腔ケア」を使っていきます。

口腔ケアの目的は何か

口腔ケアの目的は、上に記載したとおり、QOLの向上と言うことができます。
また、もう少し目的を分けてみると、以下のようになります。

  • 細菌感染による二次感染の予防(誤嚥性肺炎、細菌性心内膜炎、虚血性心疾患、糖尿病など)
  • 気分の改善や食欲増進
  • 血行の改善、唾液分泌の刺激による自浄作用の活性化
  • 口腔内の食物除去、口臭の予防
  • 口腔内の観察により、歯や口腔粘膜の状態、汚れの付着状況、出血、運動障がいの状態などを把握する
QOLの評価

【QOL評価についての関係図】

口腔ケアで注意すべきポイントと方法

口腔ケアで注意すべきポイント

患者さんは、口を触られたり、口を開けられることに対して抵抗感を持っている場合があります。
口腔は非常に敏感な機関ですし、人前で口を開けることに心理的な抵抗がある場合もあるからです。
しかし、患者さんが協力的でない場合には、かえって痛みや不快感を生みやすくもなってしまい、安全面にも支障が出てしまいます。
そのため、患者さんと適切なコミュニケーションをとることで、しっかりとした信頼体制、協力体制を築くことが重要です。

口腔ケアの方法について

実際の口腔ケアについては、以下の順番で行っていきます。

  1. 処置の内容についてしっかりと説明を行います
  2. 口から遠く、抵抗感の少ない身体の部位から触れていきます
  3. 患者の全身状態やADL(日常生活動作)に応じて、適切で安定した、安楽な姿勢を作ります
    • 誤嚥を起こしにくい体位を心がけます
    • 起坐位(上半身を約90度に起こした姿勢)またはファーラー位(上半身を約40度から45度に起こした姿勢)で頸部を前屈させた姿勢を基本体位とします
    • 上半身を起こせない場合には側臥位(腕を下にして横を向いて寝た状態)または横臥位(仰向けに寝た状態)で顔を横に向けて行います
    • 片麻痺(片側に見られる上下肢の運動麻痺、いわゆる半身不随の状態)がある場合には健側(けんそく)(麻痺や障がいなどがない部位側)を下にします
      ※[体位変換における注意点] :患者の体位を変換する際には、「患者の体を傷つけたり、痛みが出たりしないように時計や装飾品などを外す」、「患者の身体を動かすことを患者本人に伝えてから体位変換をする」などの点に気を付けましょう。
  4. 歯ブラシを持っていない方の指を口角から入れて頬を広げ口腔内の視野を確保し、歯ブラシを挿入します
  5. 口腔内の汚れを取り除きます

【口腔ケアの手順】

口腔ケアの手順図

患者の状態別の口腔ケアにおける注意点

寝たきりの患者の口腔ケアの場合の注意点

誤嚥を起こさせないように気を付ける必要があります。
できれば側臥位、できなければ仰臥位の体位で、顔を横に向けて口腔ケアを行います。
舌根部や咽頭部を刺激すると嘔吐反応を起こす可能性があるので、注意が必要です。

嚥下障がいのある患者の口腔ケアの場合の注意点

嚥下障がいがあると、口腔内の汚染が強くなりやすく、常に誤嚥性肺炎の危険性が高いと言えます。
そのため、嚥下障がいのある患者に対しては口腔ケアが特に重要です。

また、口腔内が刺激されることにより、間接的に嚥下訓練になる点もポイントです。
口腔ケアを行うときには、ファーラー位、またはセミファーラー位(上半身を約15度から30度に起こした姿勢)の体位をとり、顔面は健側を下にして横を向け、顎を引いた姿勢を取ります。

嚥下障がいがある患者の口腔ケアの手順
  1. 口腔清掃によって細菌を取り除く
    • 綿棒やスポンジなどで口腔内を清掃する
    • 歯ブラシによって口腔内を清掃する
  2. 唾液の分泌促進や嚥下反射の誘発を行う
    • 舌、歯肉、頬などをマッサージし、刺激する

【嚥下障害のある患者の口腔ケアの手順】嚥下障害の口腔ケアフロー

開口障がいのある患者の口腔ケアの場合の注意点

開口障がいがあると、舌苔が見られたり、口蓋に痰がこびりついたり、また口臭が発生したりします。
そのため、開口器やバイドブロックを使用して一定の開口を保つ必要があります。
歯ブラシを使う場合には、柔らかい歯ブラシや、球状ブラシを使う方がよいでしょう。
また、開口障がいがある患者は口が乾きやすくなっていますので、保湿剤などによる口腔内の保湿を心がけましょう。
筋肉(咬筋)などが委縮していることが多いので、マッサージを行うことが有効です。

顎間固定中の患者の口腔ケアの場合の注意点

顎間固定中は、歯肉の頬側面と唇側面の清掃は可能ですが、舌側面の清掃は困難です。そのため、水流圧洗浄器(ウォーターピック)により、十分な清掃を行う必要があります。

義歯の患者の口腔ケアの場合の注意点

義歯の場合には、毎食後義歯を外して義歯用の歯ブラシで清掃を行う必要があります。
義歯を落とすと破損してしまう可能性がありますので、義歯の清掃はボール等の容器に水を入れ、その上で行うのがよいでしょう。
就寝するときには義歯を外し、専用の容器に水を入れ、その中で保管します。

禁食中の患者の口腔ケアの場合の注意点

禁食中は唾液が減少するため、唾液による自浄作用が低下します。
唾液による自浄作用が低下している状況では細菌が付着しやすく、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
そのため、歯ブラシなどによる口腔ケアは非常に重要と言えます。

いかがでしたでしょうか。 予防を重視する歯科医院や、訪問歯科診療を行う歯科医院が増えてきている中で、歯科衛生士のみなさんが少しでも口腔ケアに興味を持ち、少しでも役に立ったと感じていただけたなら幸いです。

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監修者:藤多久仁子

歯科衛生士 (2009年免許取得)

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