歯科衛生士の勤務先は「医療法人」の歯科医院がオススメ?
【医療法人での勤務を希望する歯科衛生士もいる?】
歯科医院の名称には、単に「○○歯科医院」というものもあれば、「医療法人△△会 ○○歯科医院」というものもあり、さまざまです。
これは、「医療法人△△会」という部分が省略されて記載されていることもありますし、実際に医療法人化しているところとしていないところの違いである場合もあります。
また、歯科医院以外であっても、病院や一般診療所などでも同様です。
歯科衛生士さんが求人を見る際にも、医院名に医療法人がついていたり、ついていなかったりで「これは何だろう?」と思うこともあるのではないでしょうか?
歯科衛生士の勤務先として、医療法人であることにはメリットがあるのでしょうか?
ファーストナビでは「医療法人」についてまとめました。
「歯科衛生士の勤務先は「医療法人」の歯科医院がオススメ?」の目次
そもそも医療法人って何?
医療法人と個人開業医の違い
医療法人の歯科医院は多い?少ない?
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医療法人とは?

【医療法人と個人歯科医院の違いは?】※画像の著作者: tec_estromberg
医療法人とは何か、については医療法という法律の39条1項によって次のように定められています。
【医療法人の定義】
病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団
※社団とは:人の集合、団体として活動するもの
※財団とは:特定の目的のために集まられた財産の集合体
つまり、医療法人である歯科医院と、個人歯科医院の違いは、医療法人という団体が運営しているのか、院長個人が運営しているのか、ということです。
個人経営の歯科医院はあくまで院長のものであり、医療法人の歯科医院の院長は会社の経営者というイメージでしょうか。
医療法人と個人事業の違いは?
医療法人を設立するためにはいくつかの条件があり、医療法人であるための条件や制限などもいろいろあります。
ここでは、歯科衛生士が勤務先の歯科医院を選ぶ際に関係しそうなことがらを中心に、医療法人について紹介します。
医療法人設立の要件
医療法人を設立するためには、「人的要件」と「財産的要件」の2つをクリアする必要があります。
医療法人設立の人的要件
- 原則として3名以上の社員が必要
- ここで言う社員とは従業員ではなく、株式会社の株主のような意味合いです
- ただし、必ずしも出資している必要はありません
- 原則として理事3名以上、監事1名以上が必要
- 理事は医師または歯科医師が1名以上である必要があり、そのうちの1名が理事長となります
- 監事(法人の監督者)は法人の利害関係者や理事の6親等以内の親族は就任できないなどの条件があります
- 役員が下記の欠格事由に該当せず、成年被後見人または被保佐人ではないことが必要
- 医療法、医師法、歯科医師法及び関係法令に現在及び過去2年間において違反している
- 禁錮以上の刑に処せられ、刑を執行されているか執行猶予期間中である
【歯科衛生士の勤務先にとっての意味合い】
客観的に法人を監督する立場の人がいたり、役員に要件が課されていることで、法人が安定して正しく経営される可能性が高まります。
例えば、個人経営の歯科医院では院長の判断ひとつで違法行為が行われてしまう危険性がありますが、医療法人であれば監事等の存在によって未然に防がれることがあるかもしれません。
医療法人設立の財産的要件
- 土地や建物の担保が必要
- 医療法人は地域医療の担い手としての期待から事業の永続性を求められますので、診療を長期的に行うことのできる土地や建物が担保されている必要があります
- 具体的には、土地や建物が法人の所有であるか、賃貸借の場合は、5年以上の長期の賃貸借契約であることが必要となります
- 自動更新が保証されている賃貸借契約の場合には契約期間が2年程度でも認められることもあります
- 運転資金が必要
- 年間支出予算の2か月分を上回るお金を用意しなければなりません
- なお、医療法人化する前に個人歯科診療所として2期以上の黒字決算である場合には不要です
【歯科衛生士の勤務先にとっての意味合い】
歯科衛生士が安定して勤務するにあたり、急には歯科医院がなくならないということは安心できる材料です。
また、医療法人化している時点である程度の金銭を持っているということですので、経営が安定している可能性が高いと言えます。
医療法人になって変わること

【医療法人化によって得られるメリットも】
急に事業を廃止することはできなくなる
設立の財産的要件でも触れましたが、医療法人は地域医療の担い手としての期待から事業の永続性を求められます。
個人経営の歯科医院であれば院長の個人的な都合で歯科医院を閉めることもできますが、医療法人を解散するためには都道府県知事の認可が必要であり、個人的な都合による解散は認められません。
医療法人の理事長が引退する場合には、後任の理事長を見つけるか、M&Aなどにより事業を継続してくれる法人を探すなどする必要があります。
【歯科衛生士の勤務先にとっての意味合い】
院長が高齢であったり、体調を崩すなどして歯科医院を閉鎖するケースは少なくありません。
医療法人であれば、経営者が変わっても歯科医院自体は存続する可能性が高まりますので、安定した職場になりやすいと言えるでしょう。
社会保険・厚生年金の加入義務が生じる
個人事業で歯科医院を経営する場合には、従業員が5人未満であれば社会保険・厚生年金への加入義務はありませんが、医療法人では従業員の人数に関わらず強制加入となります。
【歯科衛生士の勤務先にとっての意味合い】
社会保険や厚生年金への加入についての是非は個人によって意見が違うところもありますが、加入を希望する歯科衛生士にとってはメリットと言えるでしょう。
決算期ごとに官庁への届け出が必要になる
監督官庁のチェックが厳しくなり、事業計画に則った経営を求められます。
【歯科衛生士の勤務先にとっての意味合い】
第三者の目が入ることで、堅実な経営方針となる可能性が高まります。
長く働くことにおいてはメリットと言えるかもしれません。
税金の負担を軽減できる
税金の負担軽減は、歯科医院の院長が医療法人化を希望する大きな理由のひとつです。
院長(理事長)が家族を役員または従業員として、給与を支払うことで、税金を軽減することができます。
【歯科衛生士の勤務先にとっての意味合い】
歯科医院の経営状態が良くなることで安定した勤務先となる可能性が高まります。
医療法人が運営している歯科医院はどれくらいあるの?
歯科医院の多くはいわゆる個人経営の開業医です。
医療法人化を目指す歯科医院もありますが、簡単に医療法人を設立できるわけではないのが実情です。
歯科医院のうち、医療法人が開設・運営している医院は20%に至りません。
なお、歯科ではなく一般診療所については40%弱が医療法人となっていますので、歯科の方がかなり割合が低いと言えます。
【歯科医院の開設者別の割合】
出典:厚生労働省

医療法人への変更
例年、500~600軒ほどの歯科医院が開設者を個人から医療法人に変更しています。
また、100軒弱ですが、逆に医療法人から個人への変更もあるようです。
(厚生労働省の発表資料より)
そのため、歯科医院全体の数としては若干のマイナス傾向ですが、医療法人開設の歯科医院については増加しているという状況です。
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