2016年02月3日

乳歯歯髄(にゅうししずい)とは

乳歯歯髄(歯内療法)における注意点

乳歯に歯内療法を施す場合には、歯根の吸収状態を考慮する必要があります。
乳歯は、萌出が完了した時点で生理的な歯根吸収がはじまります。

乳歯歯髄における疾患とその処置について

歯髄疾患の種類によって、歯髄鎮静法によって歯髄を保存することが可能なものと、歯髄除去などの歯髄処置が必要となるものとがあります。

歯髄の保存が可能な疾患

  • 歯髄充血(しずいじゅうけつ)
  • 慢性単純性歯髄炎(まんせいたんじゅんせいしずいえん)

歯髄処置が必要な疾患

  • 急性単純性歯髄炎(きゅうせいたんじゅんせいしずいえん)
  • 急性化膿性歯髄炎(きゅうせいかのうせいしずいえん)
  • 慢性潰瘍性歯髄炎(まんせいかいようせいしずいえん)
  • 慢性増殖性歯髄炎(歯髄息肉)(まんせいぞうしょくせいしずいえん/しずいそくにく)
  • 壊疽性歯髄炎(えそせいしずいえん)
  • 歯髄壊死(しずいえし)
  • 歯髄壊疽(しずいえそ)

※息肉とは:ポリープ状に増殖した肉芽性の軟組織のこと。なお、う蝕の進行により歯髄組織が口腔内に露出し、齲窩(うか:う蝕によってできた穴)にポリープ状に現れたものが歯髄歯肉です。

乳歯歯髄炎の診断

乳歯歯髄炎の診断にあたっては、保護者からしっかりと問診をする必要があります。
なぜなら、歯髄歯肉炎の患者本人である小児は、自覚症状を明確に表現、説明することができないためです。

また、問診に加えて入念に検査を行い、総合的に判断することが求められます。

乳歯歯髄の処置

乳歯の歯髄処置には保存療法と除去療法とがあり、保存療法は鎮静法と覆髄法、除去療法は断髄法と抜髄法に分けることができます。

歯髄処置の分類

歯髄鎮静法(しずいちんせいほう)

象牙質除去などの刺激によっておこった歯髄充血や単純性歯髄炎の歯髄を薬剤によって鎮静化し、正常な状態に回復させる処置です。
薬剤は、キャンフォフェニック(CP)などを用います。

※キャンフォフェニックとは
石灰酸30、カンフル60、エタノール10からなる石灰酸製剤です。う蝕の消毒や歯髄の鎮痛作用があります。

歯髄覆髄法

間接覆髄法(覆罩法)(かんせつふくずいほう/ふくとうほう)

健康な歯髄が残っている場合に歯髄を保護するための処置です。
露出している象牙質を水酸化カルシウム糊剤で覆い、歯髄を保護します。

暫定的間接覆髄法(IPC法)(ざんていてきかんせつふくずいほう/あいぴーしーほう)

深在性のう蝕があり、う蝕象牙質を完全に除去すると露髄(歯の硬組織による被覆を失い、歯髄が口腔に露出してしまっている状態をさします)するおそれがある症例に対して施される処置です。
下記の手順により、歯髄を保存します。

  1. う蝕部のう蝕象牙質はすべて除去せず、露髄しないように一部残存させておく
  2. 水酸化カルシウム糊剤を貼付することにより、う蝕象牙質の再石灰化および修復象牙質の形成を促す
  3. 6か月後を目途にう蝕部分を再度露出させ、う蝕象牙質を完全に除去する

直接覆髄法(ちょくせつふくずいほう)

外傷あるいは窩洞形成中の新鮮で小さな露髄に対する処置です。
露出部を水酸化カルシウム糊剤で被覆することにより、修復象牙質の回復をはかります。

歯髄切断法(断髄法)(しずいせつだんほう/だんずいほう)

炎症が歯冠部の歯髄に限局している場合に、その歯冠部歯髄を除去することで歯根部歯髄を保存する処置です。

一般的には下記の手順によって行われます。

  1. 歯冠部歯髄を切断・除去する
  2. 切断歯髄を水酸化カルシウム糊剤で被覆する
  3. 切断面にデンタルブリッジを新生させる
  4. 歯根部歯髄および歯根端歯周組織を正常に保つ
  5. 永久歯交換につなげる

※デンタルブリッジ:象牙質橋とも呼ばれます。切断歯髄面を覆う新生象牙質のことです。

除去療法

抜髄法(ばつずいほう)

歯髄をすべて除去し、歯周組織に感染が及ぶのを防止する処置です。
炎症が歯根部歯髄にまで波及してしまった症例に対して行われます。

乳歯では局所麻酔下で行われ、リーマー、ファイルなどで歯髄を除去したのちに、水酸化カルシウム糊剤を根管に充填します。

感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)

感染根管治療は、歯髄の病変が根尖部あるいは根分岐部の周囲組織に波及したものに対し、根管内を機械的・科学的に清掃・消毒し、充填することによって治癒をはかる治療法です。

感染根管治療のフロー

通常は1回では治療が完了せず、2,3回の治療が必要となります。
乳歯は根分岐部に病巣が波及してしまうことが多いため、根管治療とあわせて、病巣の切開、掻爬術を行う場合もあります。

感染根管治療を複数回実施しても回復が見られない場合には抜歯となることが多くなります。

根管充填(こんかんじゅうてん)

抜髄処置あるいは感染根管治療を受けた歯の根管内が清潔になった時点で、根管内を薬物で満たし、根尖部組織を健全に保つ処置です。

【糊剤根管充填剤に求められる所要性質】

  1. 乳歯の生理的歯根吸収によって吸収される
  2. 適度な持続性の殺菌作用がある
  3. 組織親和性である
  4. 根管内への挿入が容易であり、根管の細部まで到達しうる
  5. 歯質を変質させたり変色させたりしない
  6. エックス線不透過性である

2016年現在、利用されている糊剤根管充填剤は

  • 水酸化カルシウム製剤
  • 酸化亜鉛ユージノール系製剤
  • ヨードホルム・水酸化カルシウム製剤

の3種類です。
ガッタパーチャポイントなどは利用されません。

なお、操作性の容易さなどから、ヨードホルム・水酸化カルシウム製剤が最も多く利用されています。

※ガッタパーチャポイント:固形根管充填剤の一種で、
グッタペルカ(18~20%)
酸化亜鉛(61~75%)
レジン、ワックス(1~4%)
重金属硫酸塩(2~17%)
を含有するものです。(製品によって、成分の比率に差異があります)

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