訪問歯科で勤務する歯科衛生士が知っておきたい「居宅療養管理指導について」まとめ

訪問歯科衛生士が知っておきたい居宅療養管理指導についてまとめ

訪問歯科の重要性が認知され、実際に訪問歯科診療に取り組む歯科医院が増えています。
歯科衛生士さんの中にも「訪問歯科で勤務している」、「訪問歯科にチャレンジしたい」、「多少は興味がある」といった方も増えてきているのではないでしょうか。

「ファーストナビ」にご登録されている歯科衛生士さんの中にも「訪問歯科の歯科衛生士求人を探している」という方が増えてきているように思います。

過去に老企によって発信された「歯科衛生士等の居宅療養管理指導について」という通知内容をもとに、訪問歯科で勤務する(したい)歯科衛生士が知っておきたいことをまとめました。

※老企とは

「厚生省老人保健福祉局企画課長」が「各都道府県介護保険主管部(局)長」宛てに発信した通知のこと

※居宅療養管理指導とは

在宅で療養していて、通院が困難な利用者へ歯科医師、歯科衛生士、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などが家庭を訪問し、介護方法等の指導、助言や療養上の管理、指導、助言等を行うサービスまた、ケアマネジャー(介護支援専門員)に対して、ケアプランの作成に必要な情報提供も行う
なお、要介護1以上の認定を受けた方が対象となる

「訪問歯科で勤務する歯科衛生士が知っておきたい「居宅療養管理指導について」まとめ」の目次

訪問歯科に注目が集まっている
在宅医療と歯科衛生士
歯科衛生士と居宅療養管理指導
居宅療養管理指導の算定期間
指導時間に含まれるものは?
歯科医師への報告が必要
記録の作成方法
居宅療養管理指導のプロセス
指導内容の記載・保存
必要な情報提供
利用料の目安
訪問歯科の歯科衛生士求人について
訪問歯科の歯科衛生士求人を探す
「訪問歯科衛生士の必須知識?「居宅療養管理指導」について」の関連コンテンツ

訪問歯科が注目されている背景

居宅での歯科のケア

【訪問歯科のニーズは高まっている】

居宅における歯科・口腔衛生の必要性

高齢者が増加し、老化や疾患により心身の機能が低下することで医療機関への通院が困難になることや、住み慣れた自宅や地域で療養できるように環境を整備することが求められていることなどから、在宅医療に期待される役割は大きくなってきています。

そんな中、高齢者、特に要介護者の高齢者は、歯科的な問題を抱えていることが多いにも関わらず、外来での歯科受診は70歳から74歳をピークにして、その後急速に減少していると言われています。

骨折や脳梗塞等の病気をきっかけに、外出のない生活になる高齢者も多く、歯科的な問題から食欲がなくなったりしても、歯科医院への通院はハードルが高く、訪問歯科についての認識がないとなかなか解決できないケースもあります。

口腔機能の維持管理は、ただ食べるという機能に限らず、QOLの向上につながるものです。
居宅療養における口腔衛生指導の積極的な活動が求められていると言えそうです。

※QOLとは

生活の質。人間らしく満足している生活をしているかを評価する概念。

QOLの評価

<参考>歯科診療と地域医療

歯科的な問題があったり、口腔に疾患をもっている患者は、当然ながら口腔内のみではなく、例えば循環器の疾患や、脳血管の障がい、糖尿病などの全身の疾患を持っているケースも多くあります。
ですから、口腔内の診療を行うには、患者の全身状態に留意しながら医療従事者同士で情報を共有し、診療を進めるべきと言えます。

病院内外での地域における医療従事者同士の医療連携はとても重要です。
また、歯科的な問題を解決したり、口腔機能を向上させることによって全身状態の回復、改善が促されるケースも多いと言われています。

在宅医療における歯科衛生士の役割

在宅医療とは

在宅医療には

  • 歯科衛生士による訪問口腔衛生指導 のほか、
  • 医師による訪問診療、往診
  • 歯科医師による訪問歯科診療
  • 看護師による訪問看護
  • 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問リハビリテーション
  • 薬剤師による訪問薬剤指導
  • 栄養士による訪問栄養指導 等があげられます

また、在宅医療が提供される場所としては、自宅はもちろん、介護老人保健施設、有料老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅などの介護施設も含まれます。
なお、地域医療というくくりでは、上記にあげられる医療従事者のほか、社会福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、ホームヘルパー、患者が入居している施設の職員、地域の保健所の保健師などとも密接な連携が求められます。

在宅医療の連携について

訪問歯科診療とは

訪問歯科診療は、自宅または介護施設等において療養を行っていて、疾病、傷病のために歯科医院等への通勤による歯科治療が困難な患者を対象として、療養中の自宅や入居している介護施設などの屋内で歯科治療や口腔衛生指導を計画的に行うことです。

訪問口腔衛生指導

歯科衛生士が訪問指導に従事するケースとしては

  • 市区町村の行政から保険事業の一環として委託されて行う訪問口腔衛生指導
  • 歯科医院などの保険医療機関が保険診療の枠内で、対象者から要望を受けて行う訪問歯科診療の一環として、歯科医師の指示のもと行うもの

があります。
訪問口腔衛生指導は、単なる口腔ケアの指導に留まらず、食事接種を継続して行うための助言や指導も行います。

歯科衛生士等の行う居宅療養管理指導についての概要

歯科衛生士等の行う居宅療養管理指導については、訪問歯科診療を行った利用者又はその家族等に対して、当該訪問歯科診療を行った歯科医師の指示に基づき、当該医療機関に勤務する歯科衛生士等が利用者の居宅を訪問して行います。

その際に、利用者又はその家族の同意及び訪問診療の結果等に基づき作成した管理指導計画を利用者又はその家族等に対して交付し、あわせて、当該管理指導計画に従った療養上必要な実地指導を行います。

指導は、1人の利用者に対して歯科衛生士等が1対1で20分以上行うことが算定の条件となります。
また、実地指導が単なる日常的な口腔清掃等であるなど療養上必要な指導に該当しないと判断される場合は算定できません。

なお、請求明細書の摘要欄に当該居宅療養管理指導に係る指示を行った歯科医師が訪問歯科診療を行った日と歯科衛生士等の訪問日を記入することが必要です。

算定期間

カレンダー

【指導料が算定できる期間はあらかじめ決まっている】

歯科衛生士等の行う居宅療養管理指導は、指示を行った歯科医師の訪問歯科診療の日から起算して3ヶ月以内に行われた場合に算定することができます。

居宅療養管理指導時間

歯科衛生士等が居宅療養管理指導を行った時間とは、実際に指導を行った時間であり、準備や利用者の移動に要した時間は含みません。

歯科医師への報告等

歯科衛生士等の行う居宅療養管理指導については、医療機関に勤務する歯科衛生士等が、当該医療機関の歯科医師からの直接の指示等を受け、居宅に訪問して実施した場合に算定することができます。
なお、終了後は指示等を行った歯科医師に直接報告しなくてはいけません。

記録の作成等

歯科衛生士等は実地指導に係る記録を作成し、交付した管理指導計画を当該記録に添付する等により保存するとともに、指示等を行った歯科医師に報告します。

<記録・報告すること(指導の対象となった利用者ごと)>

  • 利用者氏名
  • 訪問先
  • 訪問日
  • 指導の開始及び終了時間
  • 指導の要点
  • 解決すべき課題の改善等に関する要点
  • 歯科医師からの指示等
  • 歯科医師の訪問歯科診療に同行した場合には、当該歯科医師の訪問歯科診療開始及び終了時間、及び担当者の署名

歯科衛生士等の行う居宅療養管理指導におけるプロセス

歯科衛生士等の行う居宅療養管理指導については、以下に記載するプロセスを経ながら実施します。

居宅療養管理指導におけるプロセス

<プロセスの詳細>

口腔機能スクリーニング

利用者の口腔機能(口腔衛生、摂食・嚥下機能等)のリスクを把握する

口腔機能アセスメント

口腔機能スクリーニングを踏まえ、利用者の解決すべき課題を把握する

管理指導計画

口腔機能アセスメントを踏まえ、歯科医師、歯科衛生士その他の職種の者が共同して、利用者ごとに利用者の疾病の状況及び療養上必要な実地指導内容や訪問頻度等の具体的な計画を含めた管理指導計画を作成する

  • <記載すべき内容>
    • 口腔衛生に関する事項(口腔内の清掃、有床義歯の清掃等)
    • 摂食・嚥下機能に関する事項(摂食・嚥下機能の維持・向上に必要な実地指導、歯科保健のための食生活指導等)
    • 解決すべき課題に対し関連職種が共同して取り組むべき事項等
  • 利用者の疾病の状況及び療養上必要な実地指導内容や訪問頻度等の具体的な計画を含めた管理指導計画を作成する
  • 作成した管理指導計画については、居宅療養管理指導の対象となる利用者又はその家族に説明し、その同意を得る

実地指導の実施

管理指導計画に基づき、利用者に療養上必要な実地指導を実施するとともに、管理指導計画に実施上の問題(口腔清掃方法の変更の必要性、関連職種が共同して取り組むべき事項の見直しの必要性等)があれば直ちに当該計画を修正する

口腔機能モニタリング

  • 利用者の口腔機能に応じて、定期的に利用者の生活機能の状況を検討し、口腔機能のモニタリングを行い、当該居宅療養管理指導に係る指示を行った歯科医師に対する報告を行う
  • なお、口腔機能のモニタリングにおいては、口腔衛生の評価、反復唾液嚥下テスト等から利用者の口腔機能の把握を行う

歯科医師への報告/管理指導計画の見直し

利用者について、概ね3月を目処として、口腔機能のリスクについて、口腔機能スクリーニングを実施し、当該居宅療養管理指導に係る指示を行った歯科医師に報告し、歯科医師による指示に基づき、必要に応じて管理指導計画の見直しを行う

なお、老人保健事業として市区町村の保健師から依頼されて訪問口腔衛生指導を行った場合には、報告先は担当の保健師となる
管理指導計画の見直しに当たっては、歯科医師その他の職種と共同して行う

記録

訪問口腔衛生指導を行った場合は、看護師、ケアマネジャーなどの関連する他の医療従事者と情報を共有したり、指導実施の責任の所在を明確にするための記録を行う

  • 継時的な変化がわかるように、正確な情報を客観的に記録する
  • サービスの提供の記録において利用者ごとの管理指導計画に従い歯科衛生士等が利用者の状態を定期的に記録する場合は、当該記録とは別に歯科衛生士等の居宅療養管理指導費の算定のために利用者の状態を定期的に記録する必要はない

内容の記載と保存

指導内容の記録を保存

【指導結果等の内容は歯科医師が記録する】

当該居宅療養管理指導に係る指示を行った歯科医師は、訪問歯科診療の結果等に基づき指示した内容の要点を記載し、共同で作成した管理指導計画を添付する等により保存します。
なお、当該記載及び添付については、医療保険の診療録に記載及び添付することとすることもできますが、記載については、下線又は枠で囲う等により他の記載と区別する必要があります。

情報提供等

利用者の口腔機能の状態によっては、医療における対応が必要である場合も想定されます。
そのため、その疑いがある場合は、利用者又は家族等の同意を得て、指示を行った歯科医師、歯科医師を通した指定居宅介護支援事業者等への情報提供等の適切な措置を講じる必要があります。

<参考資料>

介護予防居宅療養管理指導の利用料の目安(1回あたり)

歯科医師が行う場合(月2回まで) 同一建物居住者以外の利用者に対して行う場合 503円
同一建物居住者に対して行う場合(同一日の訪問) 452円
歯科衛生士等が行う場合(月4回まで) 同一建物居住者以外の利用者に対して行う場合 352円
同一建物居住者に対して行う場合(同一日の訪問) 302円
医師が行う場合(月2回まで) 下記以外 同一建物居住者以外の利用者に対して行う場合 503円
同一建物居住者に対して行う場合(同一日の訪問) 452円
医療保険による訪問診療(在宅時医学総合管理料または特定施設入居時等医学総合管理料)を受けている場合 同一建物居住者以外の利用者に対して行う場合 292円
同一建物居住者に対して行う場合(同一日の訪問) 262円
薬剤師が行う場合 病院または診療所の薬剤師が行う場合(月2回まで) 同一建物居住者以外の利用者に対して行う場合 553円
同一建物居住者に対して行う場合(同一日の訪問) 387円
薬局の薬剤師が行う場合(月4回まで) 同一建物居住者以外の利用者に対して行う場合 503円
同一建物居住者に対して行う場合(同一日の訪問) 352円
管理栄養士が行う場合(月4回まで) 同一建物居住者以外の利用者に対して行う場合 533円
同一建物居住者に対して行う場合(同一日の訪問) 452円
保健師・看護師が行う場合(サービス開始から6か月間で2回まで) 同一建物居住者以外の利用者に対して行う場合 402円
同一建物居住者に対して行う場合(同一日の訪問) 362円

いかがでしたか?
ちょっと専門的な内容が多くて難しく感じてしまった方もいるかもしれません。
ぜひ、じっくりと内容をご確認いただき、多くの歯科衛生士さんが訪問歯科にチャレンジしていただければ幸いです。

訪問歯科の歯科衛生士求人は多い?

歯科衛生士の求人・採用は積極的!

もちろん、訪問歯科のみならず、一般外来の歯科医院でも歯科衛生士不足は深刻であり、多くの歯科衛生士求人が出ています。

しかし、訪問歯科医院はチェーン化している歯科医院も多く、分院等の新規出店も活発な傾向にあります。

そのため、外来以上に、訪問歯科の歯科衛生士求人は多いと言えます。

パート求人もおすすめ

また、訪問歯科の歯科衛生士求人の特徴のひとつとして、パートでもOKという求人が多いことがあげられます。

特にママさん歯科衛生士さんに人気のある短時間のパート求人や午前中のみのパート求人についても訪問歯科の歯科医院の方が受け入れてくれやすいと言えます。

パートの求人を探しているけれどなかなか条件が合わないという歯科衛生士さんは、是非訪問歯科での仕事を検討してみてくださいね。

訪問歯科の歯科衛生士求人を人気エリアから探す

登録して非公開の《訪問歯科》歯科衛生士求人を受け取る

関東エリア
東京都 神奈川県 埼玉県 千葉県 茨城県 栃木県 群馬県
東海・近畿・中国エリア
大阪府 兵庫県 愛知県 広島県
北海道・東北・九州エリア
北海道 宮城県 福岡県

「訪問歯科衛生士の必須知識?「居宅療養管理指導」について」の関連コンテンツ


★ ファーストナビは歯科衛生士のお仕事紹介実績No.1!

求人紹介サービスに登録
登録して【ファーストナビ歯科衛生士限定】非公開求人を受け取る

監修者:藤多久仁子

歯科衛生士 (2009年免許取得)

キャリアエージェントとしての勤務経験もあり、歯科衛生士の転職サポート実績も多数。

1
1分で簡単登録

登録は4ステップで所用時間は約1分! 細かい職歴を記載する必要はありません!

2
エージェントと相談

弊社エージェントからご連絡いたします。 現在のご状況や転職のご希望条件をお伝えください。

3
ご要望にあったお仕事をご紹介

条件面のご紹介はもちろん、ご不明な点やご不安に思っていることについても ご相談させていただきます。