2015年12月11日

乳歯、幼若永久歯の歯冠修復[にゅうし、ようじゃくえいきゅうしのしかんしゅうふく]について

乳歯の歯冠修復の目的

乳歯の歯冠修復が行われる主な目的は、以下のようなものです。

  • う蝕の進行を抑制する
  • 口腔内のミュータンスレンサ球菌数を減少させる
  • 乳歯歯髄を保護する
  • 咀嚼、発音機能を回復する
  • 歯冠近遠心幅径および高径を保持する
  • 審美性を回復する

乳歯の歯冠修復の種類

どのような乳歯の歯冠修復の方法が用いられるかは、歯種によって使い分けられます。

歯種と修復方法

歯種 修復方法
前歯 コンポジットレジン修復
グラスアイオノマーセメント修復
コンポジットレジン冠修復
臼歯 コンポジットレジン修復
グラスアイオノマーセメント修復
インレー修復
乳歯用既製冠修復
全部鋳造冠修復

修復材の選択

乳歯における修復材の選択には、下記の点を考慮します。

  • 修復材料の理工学的性質
  • 生物学的性質
  • 乳歯の種類
  • 乳歯の脱落時期
  • 小児のう蝕活動性

修復材の種類

  • レジン修復
    • 以前は主に前歯部に使用されていましたが、材料の改良に伴い前歯部だけではなく、臼歯部の修復にも使われています。
  • グラスアイオノマーセメント修復
    • 理工学的性質はレジンに比べて劣りますが、操作が容易であり、歯髄刺激性が少ないうえ、フッ化物を含有してう蝕予防作用が期待できます。
    • 裏層、合着、修復充填、裂溝充填などに使われます。
  • インレー修復
    • インレー修復は乳歯においては乳臼歯に適応が限られます。
    • その理由としては、審美性の問題のほか、乳歯は永久歯に比べて歯質が薄く、深い窩洞の形成が難しいことがあげられます。
    • また、技工操作を要するため、即日処置はされません。

乳歯の全部修復

乳前歯の全部修復

切縁を含む、広範囲のう蝕や外傷による歯冠破折の修復については、クラウンフォーム(乳前歯修復の際に用いられる、プラスチック製のストリップスクラウン、またはそれを用いてレジンを付形し、歯冠状態を回復する修復のこと)を用いてレジンにより全面の被覆を行います。
修復の手順は下記のとおりです。

  1. 歯冠を形成する
  2. クラウンフォームを選択する
  3. 金冠バサミ(金属材料を剪断するためのハサミ)を用いて患歯に適合させる
  4. 酸処理を行う
  5. 水洗する
  6. 乾燥させる
  7. ボンディング材を塗布する
  8. クラウンフォーム内にレジンを入れ、患歯に圧入して適合させる
  9. 光照射し、レジンを硬化させる
  10. クラウンフォームを除去し、咬合調整と研磨を行う

乳臼歯の全部修復

多歯面にわたるう蝕や歯髄処置を行った乳臼歯には乳歯用既製冠を用います。
乳歯用既製冠は、歯質削減量が比較的少ないうえに即日の処理が可能であるため、う蝕活動の高い小児の処理によく使われます。
修復の手順は下記のとおりです。

  1. 歯冠を形成する
  2. 乳歯用既製冠を選択する
  3. 曲の金冠バサミ、ゴードンのプライヤー(鉗子)により乳歯用既製冠を調整する
  4. 乳歯用既製冠を試適する
  5. カーボランダムポイント(人工石の一種であるカーボランダムを糊で固めて形成した回転切削材)、シリコーンポイント(カーボランダムやアルミナなどの砥粒をシリコーンゴムで固めてポイント状に形成したもの)により乳歯用既製冠の研磨を行う
  6. セメント合着をする
  7. 余剰セメントを除去する

<参考>鋳造冠(キャストクラウン)

鋳造法によって作製された金属冠のことです。
辺縁の適合が正確にでき、理想的な咬合関係、隣接歯との接触関係、外形を付与することができます。
鋳造冠は強度や適合性では乳歯用既製冠よりも優れていますが、こと乳歯については歯冠高径が短く十分な保持力を得るためには保持溝を付加する必要があります。
また歯頸部の狭窄が著しく歯質の削除量が大きいうえ、エナメル質を削除しなくてはならないという問題点があり、乳歯に対して歯あまり利用されていません。

※鋳造とは
ワックスやレジンなどで作製された鋳型を埋没材中に埋没させ、鋳型材料を焼却したのちにその中に溶解した合金を鋳込んでインレーや補綴物などを作成すること

幼若永久歯の歯冠修復

幼若永久歯の歯冠修復を行う場合には、下記の点に注意する必要があります。

臨床的歯頸線の安定後の処置

萌出途上の永久歯は臨床的歯頸線の位置が変化するため、歯頸部まで及ぶような幼若永久歯の修復は暫間的な処置にとどめます
その後、臨床的歯頸線が安定した段階で永久的な歯冠修復処置を行います。

幼若永久臼歯の歯髄保護

幼若永久臼歯には下記のような特徴があるため、歯髄の保護には十分に配慮する必要があります。

  • 形状途中であるため、象牙質が薄い
  • 窩洞形成時には露髄の危険性が高い
  • 象牙細管が太い
  • 歯髄が外来刺激の影響を受けやすい

歯肉弁の切除

歯肉弁(歯槽骨から剥離した歯肉のこと。粘膜弁と粘膜骨膜弁とがあります。)が歯冠の一部を覆っているような場合には、歯肉弁の切除を行ったのちに暫間的処置を施す必要があります。

咬合関係確立後の処理

萌出途上の永久歯は、適切な咬合関係を確立するまで移動を続けます。
そのため、咬合関係が確立するまでは幼若永久歯の修復は暫間的な処置にとどめます。

幼若永久臼歯のラバーダムクランプの装着

幼若永久臼歯は歯頸部のアンダーカットまで萌出していないため、ラバーダムクランプの装着が困難です。

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