チーム医療における歯科衛生士の関わり方
【歯科衛生士を含めてのチーム医療も増えている】
医療の高度化、複雑化等により、多種多様な職種の医療従事者によって情報共有、役割分担を行っていくことで、医療の質や安全性の向上、医療従事者の業務増大によるマンパワー不足に対応する「チーム医療」が推進、実践されています。
もちろん、歯科衛生士も国家資格保有の医療従事者ですので、チーム医療において活躍するシーンもあり、今後ますますそういった場面が増えていくことが期待されます。
ファーストナビでは、歯科衛生士が関わっているチーム医療の事例をまとめました。
「チーム医療における歯科衛生士の関わり方」の目次
事例1:栄養サポートチームへの関わり
事例2:集中治療チームへの関わり
事例3:回復期リハビリチームへの関わり
事例4:回復期病院と地域の歯科医師会の連携への関わり
事例5:口腔ケアチームへの関わり
事例6:急性期病棟チームへの関わり
歯科衛生士とチーム医療についてのまとめ
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歯科衛生士が関わっているチーム医療事例①
【栄養サポートチームへの歯科衛生士の参加】
チーム、取り組みの名称
栄養サポートチーム
チーム形成の目的
栄養障害の状態、またはハイリスク患者の生活の質の向上・早期退院
栄養障害の状態にある患者またはそのハイリスク患者すべてに対して、必要な時に必要な対応を専門職種が行うこと。
患者の生活の質の向上、原疾患の治癒促進および感染症等の合併症を予防し、早期退院に結びつけること。
チームによって得られる効果
- 肺炎等の合併症が減少し、在院日数が短縮するなど医療の質が向上する
- マンパワーを充実しても労働生産性が向上することにより、相対的に人的コストが削減できる
- 輸液、抗生剤等の使用量が減少し、物的コストが削減できる
チーム内における歯科衛生士の役割、仕事内容
- 口腔内清掃状態のチェック
- 義歯、かみ合わせの状態評価
- 口腔ケアチームへの橋渡し
チームを構成する歯科衛生士以外の職種
医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、リハビリスタッフ、臨床検査技師、歯科医師
チーム運営について
- 担当看護師が全患者のスクリーニングを入院時および入院後週1回実施
- リスク患者に対し、病棟に配属された管理栄養士が栄養評価と栄養計画を毎日実施
- 病棟の担当医師と看護師、管理栄養士などが栄養サポートを栄養計画に基づいて対応
- ICU、CCUは週2回、HCUや一般病棟は週1回のカンファレンスや回診を実施
- 管理栄養士が24時間(夜間は呼び出し)365日(休・祝日出勤)の栄養サポートに対応
歯科衛生士が関わっているチーム医療事例②
【集中治療チームへの歯科衛生士の参加】
チーム、取り組みの名称
集中治療チーム
チーム形成の目的
チーム病棟専従型他職種チームの構築による質が高く安全な集中治療の実現
集中治療の対象となる患者は、多種多様の重症疾患を抱えたうえ、心機能、腎機能、肝機能、呼吸機能など様々な臓器機能が低下している。
“年々治療法が進歩していく中で、作用が急激な注射剤の多種併用、患者の状態に応じた時間単位のきめ細かな投不薬剤・ 投不量の設定、様々な医療機器の使用など、各職種の医療スタッフがチームを組み、その専門性をもとに治療の質、安全性の向上を図ることは非常に重要である。 ” このようなチーム病棟専従型他職種チームが構築されてはじめて質が高く安全な集中治療が可能。
チームによって得られる効果
- 安全かつ効果的な治療による、ICU在室日数、病院在院日数の短縮
- 医療費の削減、物的コスト削減
- 副作用、合併症、原疾患の悪化などの早期対応、未然回避
チーム内における歯科衛生士の役割、仕事内容
- 歯科医師の指示の下、入院食の変更や調整を行う
チームを構成する歯科衛生士以外の職種
医師、看護師、薬剤師、臨床工学士、理学療法士、言語聴覚士、歯科医師
チーム運営について
- 患者入室時、毎朝のカンファレンスによる情報や方針の共有化
- 電子カルテによる情報の共有化
- 各チームスタッフの病棟専従・常駐化(不在時は院内 PHS の対応など)
歯科衛生士が関わっているチーム医療事例③
【回復期リハビリテーションチームへの歯科衛生士の参加】
チーム、取り組みの名称
回復期リハビリテーションチーム
チーム形成の目的
病棟専従多職種のチーム構築による質の高いサービスの効率のよい提供、安心した地域生活の実現
特に脳卒中患者や肺炎による廃用症候群患者などは多くが高齢者のために、多種多様なリスク(慢性疾患や再発、合併症)を抱えている。
その様な状況下で、障害の改善、家?復帰を支援することとなる。
そのためには医師・看護師のみならずその他の多くの専門職が患者の日常生活を基本とした関わりが重要であり、病棟専従多職種がチームを構築してはじめて、質の高いサービスを効率よく提供、安心した地域生活に繋げていくことが可能となる。
チームによって得られる効果
- セラピストのみならず介護福祉士、社会福祉士、管理栄養士、歯科衛生士などが病棟専従となることで専門職間の垣根が無く、日常的に情報交換・検討が盛んとなる
- 専門的視点に立って評価・プログラム作成を行い、カンファレンスで統一した目標に向かって関わることが可能となる
チーム内における歯科衛生士の役割、仕事内容
- 歯科医師との連携の窓口機能
- 口腔衛生状態の評価、口腔ケアのプログラム作成(重度障害患者に対する口腔ケア技術助言・援助)、歯ブラシなどの患者・家族指導を行う
チームを構成する歯科衛生士以外の職種
病棟専従医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、管理栄養士、理学療法士、言語聴覚士、登録歯科医師(歯科診療所の歯科医師による連携)
チーム運営について
-
チーム運営に関しては以下の項目が前提であり、教育が必要である
- 電子カルテによる情報の共有化
- カンファレンスの重視
- チームマネジメント能力
-
それぞれの職種の知識・技術力向上に向けた教育体制が前提となる
歯科衛生士が関わっているチーム医療事例④
【地域歯科医師会との連携における歯科衛生士の参加】
チーム、取り組みの名称
歯科のない回復期病院と地域歯科医師会との連携
チーム形成の目的
地域全体での医療連携チームを構築し、質の高い医療を提供する
歯科標榜がない回復期病院において、地域歯科医師会と病院との協議のもと、入院期から病院スタッフと連携し口腔リハビリテーションを含む歯科治療が退院後まで切れ目なくスムーズに提供できる環境を作り、地域全体での医療連携チームを構築し、医科と歯科の視点から患者に質の高い医療を提供する。
チームによって得られる効果
- 咬合支持の回復により、栄養摂取レベルの向上が期待できる
- 包括的な医療連携チームにより口腔を含む切れ目ない回復支援に貢献できる
- 関係職種の資質の向上を図ることが可能となる
- 入院患者の歯科医療ニーズに的確に応えることができるようになる
- 退院後に地域での歯科的管理の継続ができる
チーム内における歯科衛生士の役割、仕事内容
連携する歯科診療所の歯科衛生士
- 歯科医師に随行する歯科衛生士は、歯科医師の口腔診断評価を受けて、口の機能訓練ならびに口腔ケアを行い、患者・家族・病棟スタッフに口腔保健指導を実践する
- 歯科医師の指示のもとに専門的口腔ケア(歯石除去等)を行う
病棟の歯科衛生士
- 病院勤務の歯科衛生士は、入院患者の口腔ケアに関するアセスメントを行い、歯科医師に報告する
- 他の病院スタッフや本人家族に対して口腔ケアに関する助言を行う
- 地域の登録歯科医師との連携窓口の役割を担う
チームを構成する歯科衛生士以外の職種
病棟医師(リハ医師)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、登録歯科医師(歯科診療所の歯科医師による連携)
チーム運営について
- 医科歯科連携の運営協議会で作成した連携表を通して歯科情報の提供を行い病院スタッフとの連携をスムーズに行うようになっている
- 退院時カンファレンス等に際して、病院へ歯科情報を提供し患者の在宅支援を行っている
- 定期的に運営協議会を開催し、適宜問題状況の改善を図る
- 年1回登録歯科医師の会を開催し研修等を行う
歯科衛生士が関わっているチーム医療事例⑤
【口腔ケアチームへの歯科衛生士の参加】
チーム、取り組みの名称
口腔ケアチーム
チーム形成の目的
地域連携パスにより、継続した一貫性のあるケアをシームレスで提供する
- 口腔ケアが必要な患者に多職種とチーム医療(呼吸サポート、栄養サポート、摂食嚥下、周術期管理、褥創対策、口腔ケアなど)を実践する
- 学生及び臨床研修医の研修・実習に資する
- 退院後の地域連携パスにつなぎ地域医療に貢献する
チームによって得られる効果
- 口腔ケア(専門的ケア)の徹底と口腔機能療法を行うことで誤嚥性肺炎や窒息事故等の発生を防止し、経口摂取を早めて患者の回復と医療の円滑化に有効である。
- 学部連携の病棟実習や臨床研修医のチーム医療の教育に有効である。
- 入院中の口腔ケアを退院後の在宅療養における地域連携パスで地域連携チームや地域の診療所に繋ぐことで継続した一貫性のあるケアがシームレスで提供できる。
チーム内における歯科衛生士の役割、仕事内容
- 歯科医師の指示のもとに、専門的口腔ケアを行う
- 患者・家族・病棟スタッフに口腔ケアの指導を行う
- 必要に応じて、歯科医師の指示のもと、除石処置などの医療的口腔ケアを行う
チームを構成する歯科衛生士以外の職種
医師、看護師、理学療法士、臨床工学士、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、歯科医師
チーム運営について
- 必ず医師がチームに入るようにして全病棟をラウンドする
- 病棟をラウンドして主治医と担当看護師に経過を報告する
- 特に歯科医療的な問題がある患者に対しては、歯科の口腔ケアチームに依頼する
- 各チームのカンファレンスにはチームの全職種が参加する
- チェックリストを作製し、ラウンドしたら必ず、チーム個々のサインを行う
歯科衛生士が関わっているチーム医療事例⑥
【急性期病棟チームへの歯科衛生士の参加】
チーム、取り組みの名称
社会福祉士配属による患者・家族参加型の急性期病棟チーム
チーム形成の目的
専門職とのスムーズな連携・協働による患者・家族が納得いく退院の実現
- 入院・治療・退院の流れの中で、派生する患者とその家族の経済的・心理社会的問題に対し即時に介入し早期にソーシャルワーク援助を提供することができる。
- 退院調整において、早期の介入を図るとともに他の専門職とのスムーズな連携・協働のもと患者・家族が納得いく退院に至ることができる
チームによって得られる効果
- 医療費や家?の問題が早期に解決することにより、患者が安心して治療に専念できる
- 在院日数が短縮でき、救急入院患者をスムーズに受け入れることができる
- 高齢世帯や独居高齢者、認知症を伴っている患者、癌ターミナル期の患者など社会的制度の活用や地域支援機関との連携が必要な患者に対し、早期に家族関係などの調整を図り適切な生活環境を整えることができる
チーム内における歯科衛生士の役割、仕事内容
- 医師、看護師、リハビリスタッフ、薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士・社会福祉士による週1回の方針決定カンファレンスに参加
チームを構成する歯科衛生士以外の職種
医師、看護師、リハビリスタッフ、管理栄養士、社会福祉士
チーム運営について
- 担当看護師が入院時に全患者のスクリーニングを実施
- 社会的リスク患者を社会福祉士に連絡する
- 毎日、担当看護師、病棟配置の他職種と随時担当社会福祉士間のコミュニケーションを図っている
- 医師、看護師、リハビリスタッフ、薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士・社会福祉士による週1回の方針決定カンファレンスを開催
- 週1回の病棟カンファレンスに参加。科(脳外科・心臓血管外科・整形外科)によっては回診へ社会福祉士が参加しその場で情報提供や意見交換を行う
- 週1回の病棟別病床会議に参加し、看護部長・病棟師長・退院調整看護師・担当社会福祉士とで退院調整について介入の依頼受理・調整状況の報告・意見交換を行う
- 地域の医療機関との連携強化
歯科衛生士が関わっているチーム医療の事例についてまとめ
【チーム医療と歯科衛生士の今後は?】
いかがでしたでしょうか。
実は多くの歯科衛生士さんが、チーム医療の一員として、さまざまなシーンで活躍しています。
ますますチーム医療が推進されていくに伴い、歯科衛生士の活躍の場もより幅広くなっていくことでしょう。
今後もより多くの「歯科衛生士が関わっているチーム医療」の事例が増えていくことに期待したいですね。
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